【どろろ】和風アニメの大傑作
どろろ、本当にすばらしい作品でした。
2019年は ワンパンマン、盾の勇者、かぐや様、Dr.STONEと、個人的名作の揃う年でしたが、「どろろ」もそれに並ぶ傑作でした。
この記事はネタバレを含みます。
和風アニメーションの超傑作
脚本、作画、音楽(それとどろろ萌え)が素晴らしいアニメでした。
「どろろ」の素晴らしさは、そのシナリオにあります。
化け物を倒して体を取り戻す旅に出るというわかりやすいスタート地点でありながら、
その出自が明らかになるにつれ、自分の体を取り戻すことが一国を滅ぼすことと等価になることがわかる。
その不安定なジレンマにどうやって答えを出していくのか、というところが
この作品の大きなテーマであり、私もどのようなラストになるのか
予想がつかず、最後まで釘付けになりました。
百鬼丸とどろろの成長
また、体を取り戻すことは人間としての感性を取り戻すことに等しく、
当初は戦闘狂だった百鬼丸も徐々に人間らしく成長していきます。
この成長の仕方は他のアニメでは類を見ません。
もちろん、どろろの存在も大きいです。
普通の人間としての視点から旅をお供する仲間という意味合いが当初は大きかったように思いますが、
どろろもまた出自が明らかになり、百鬼丸と共に戦乱に翻弄される人々の悲惨さを経験して、おっかちゃんとおとうちゃんが何を自分に託したのか、
その答えと意義を見つけ、百鬼丸や人を導く重要人物になります。
まあ、タイトルが「どろろ」なので当然と言えばそうですが、
どろろにも重い過去や背景をもたせることでとても分厚い作品に感じられました。
戦乱の惨状を力強く生きる民
こういう時代のアニメで大体主人公になるのは武将であったり忍者であったりということが多く、友情・努力・勝利などポジティブな面にフォーカスされることが多いように感じますが、
「どろろ」でフォーカスが当たるのは戦乱や災厄に翻弄させる弱い民たちでした。
非常に残酷な描写も多く報われない胸糞展開も多々ありましたが、
思うにそのような行いが過去の日本でも当然のように行われていたのでしょう。
(当時の人々が絶望の淵を懸命に生き、未来につなげたからこそ今の我々の豊かな暮らしがあるのかなあ、という風に想ったりもしました。)
こういう生々しくつらい描写があるからこそ、
和風アニメとしての暗鬱とした雰囲気の完成度は非常に高く、
当時の世界にタイムスリップしたような気分で、ハラハラとしたストーリーに最後まで心をえぐられました。
どろろ萌え
真面目な話が続きましたけど、惨い話でも見続けられたのは間違いなくショタコン大歓喜のどろろちゃんのおかげです。
しかも実は女の子っていう設定付き。ロリコンも歓喜で思わず拍手。
手塚治虫先生はヲタの性癖がよくわかっていらっしゃるのね。((
いやぁしかしどろろがかわいいのなんの。
声優が演技派という感じではなく、
初心な感じが出ているのもまた良いチョイス。
表情豊かで、ところどころでアニメーションがよく動く、
無邪気で殊勝で優しくて芯が強くて子供らしく照れたりもして。
しかも大人の女性になってましたね。
本当に、どろろはかわいいですね。
制作スタジオのみなさま、あなた方にはお礼を言いたい。
無限スペック琵琶丸
この作品の中でも狂言回しのような立場の琵琶丸さんですが、
百鬼丸と同様に盲目ですがめっちゃカッコいい渋いおじさんです。
出自も正体も最後まで謎な人物でしたが、ときにどろろ達を助けたり、
諭したり、などと最初から最後までちらほら、神出鬼没の琵琶丸。
琵琶に仕込んだ刀で、怪物を一刀両断するシーンもありましたね。
百鬼丸は怪物と戦う時になんだかんだ怪我したりしてますが、
琵琶丸は危なかったシーンがひとつもありませんでした(笑
1話 産婆を食った怪物を一刀両断し百鬼丸誕生の生き証人になる
5話 音によって苦戦していた百鬼丸をよそに怪物を一刀両断
20話 溺れそうなどろろを仕込み刀で的確に岩を破壊し救出、
24話 湿地帯がぬかるんで上手く歩けない縫の方お母さんの杖になる
(↑いや、ふつう盲人が導かれる側なんだけど、、、)
24話 百鬼丸とどろろの二人を縄一本で、たった一人で引き上げる
まさに無限スペック琵琶丸。
めっちゃカッコよくてしびれました。
このキャラがいることで「どろろ」の和テイストに磨きがかかって、
作品の魅力も上がった気がします。
母の答え
閑話休題。
百鬼丸を救って国を滅ぼすか、
国を救うために百鬼丸を滅ぼすか、
なんだかトロッコ問題みたいですね。
百鬼丸にとっては、自分の体を取り戻すことにそれ以上の理由はいりません。
しかし、多宝丸にとっても一人の犠牲で済むのなら国を救うべきだということも
また正義なのでしょう。
どちらかしか選択できないんだろうと私も最後まで考えていましたが、
縫の方お母さんは
「何者かに頼って築く平安は脆い。それが骨身にしみてわかりました。この十数年続いた我が国の繁栄、それは百鬼丸ただ一人の犠牲でもたらされたもの。わたくしたちは親に餌を貰う雛鳥のようなもの。ただ口を開けて喰らっていたに過ぎませぬ。自らの手で掴まなかったものは、守ることもまたできない。」
先述のトロッコ問題は、百鬼丸ただ一人の犠牲がいつのまにか前提となっていました。
そのスタート地点そのものが間違っていた。
戦乱に翻弄され、不遇を嘆く民も結局は侍になんとかしてもらうことしか考えていなかった。
鬼神と手を結び、百鬼丸をどうにかすることでしか国の繁栄は望めないと考えていた。
誰かに頼る平安は脆い。
ならば、自分たちで、地面をはいつくばってでも、百鬼丸のように望みを手に入れようとする、どろろ達の決意が見えた瞬間は熱かったですね。
まとめ
百鬼丸は全然喋らない、特に必殺技もないしキャラtierとかもない、わかりやすい特長をもったキャラクターもそんなにいない、
そんな作品なのにすごく歯ごたえがあって本当に面白かった。
どろろ萌えや刀アクションなど大味な魅力もありつつ、重厚なストーリーにも本当に魅せられました。
メディアミックスを意識した作品では決してありませんが、緻密なシナリオや和テイストの音楽・作画にこだわりを振り切ることで芸術性の高い作品に仕上がっています。